私たちの研究およびご提案

私たちの提案は次の図の説明から始めます。図をちらっとみてピンと来た方は、(そうでない方も)どうぞ先をお読みください。すでに日本でもDR(デマンドレスポンス)によるビジネスが始まっています。新電力としてこのデマンドレスポンスの事業に参入しているところはまだ少ないようですが、デマンドレスポンスこそは「電力システム改革」のキー概念の一つです。日本でも電力システム改革の波は着実に押し寄せて来ています。デマンドレスポンスとは何でしょうか?新電力にとってこのビジネスの何が重要なのでしょうか?

1.DRアグリゲータービジネスの勧め

スマートグリッド
このビジネスに参入するにはデマンドを正確にモニタリングしコントロールしなければなりません。しかしこのデマンドを正確にモニタリングすることがこれからの電力ビジネスにとって要(かなめ)中の要なのです。(下記の図は今夏の北海道電力のアグリゲーター募集にあったものをほとんどそのまま模倣しました。)

ネガワットフロー図

今夏も電力供給がひっ迫していた北海道電力と九州電力がアグリゲーターを募集して電力のピークをしのぎました。(北海道電力のデマンドアグリゲーター募集)電力需要のピーク時において、デマンドレスポンスによる需要抑制ほど確実な方法はありません。考えてみて下さい。もしこのアグリゲーターに契約している需要家が普段通りの電力対応だったとしたら、逆に電力のピークを押し上げる方向に行動していたかも知れません。それが通常のデマンドよりも引き下げる方向で行動してくれるのですから。

DRアグリゲーターとは何でしょうか?今までの電力システムのプレーヤーと言えば、(1)発電、(2)系統運用・市場運営、(3)送配電、(4)小売りの4部門でした。しかしこれからは、第5のプレーヤーが重要な役割を果たすことなるでしょう。それがアグリゲーターです。電力需要を抑制することによって電力システムに貢献し対価を得る部門です。ここでは一般企業の節電が、そのこと自体で発電容量と同様の扱いになっています。DRアグリゲーターは電力需要をDRリソースとして集約し電力会社(系統機関)に販売します。
デマンドレスポンス

デマンドレスポンスを駆使したプレーヤーになることは新電力のビジネスで成功を収めるためには必須の事業分野になることでしょう。そのためには電力量を正確に、リアルタイムにモニタリングすることが必要になります。

しかし、それにしても、何故デマンドを抑制するような面倒なビジネスが必要なのでしょうか?(aggregator:デマンド抑制を集合して販売する事業者)

※今夏北海道電力は、需給ひっ迫時の電力需要の削減の委託契約の募集を行いました。北海道電力では対価について3つの概念(アグリゲート料金,実施料金,契約未達調整料金)で説明しています。

  • アグリゲート料金は、契約締結時にあらかじめ定める削減可能な電力(契約削減電力)に応じて、需要削減の実施有無に関わらず支払うこと。
  • 実施料金は、需要削減を実施した場合に、実績削減電力に応じてお支払う。なお,実績削減電力には原則として上限値を設定する。
  • 需要削減を実施した場合で、実績削減電力が契約削減電力に満たない場合には、契約未達調整料金を徴収することがある。

アグリゲーター概念図
それはこのデマンドレスポンスが一番コストの安い調整電源だからです。このデマンドレスポンスは電力のキャパシティ(電力容量)としてばかりでなくアンシラリーサービス(周波数調整)としても機能します。

ここでちょっと発電所についておさらいします。一口に発電所と言ってもその機能には(1)電力、(2)容量、(3)アンシラリーサービスの機能があります。このうち(1)の電力の機能は当然すべての発電所が持っていますが、(2)容量および(3)アンシラリーサービスの機能は、通常ガスタービン発電所など柔軟性のある発電所が担い、再生可能エネルギーの発電所などはこの二つの機能をもっていません。逆に再生可能エネルギーの比率が高まれば高まるほどこの二つの機能である調整電源が重要になってきます。DRアグリゲーターはこの調整電源としての機能を果たします。

北海道電力および九州電力において、今後もこのアグリゲーター募集は継続されることと思われます。それどころかさらに増えて行くことでしょう。なぜなら北海道および九州では今後再生エネルギーの比率は急速に増すことは確実だからです。これは必然的に調整電源の重要性が急速に増すことを意味します。

しかし、このDRが理論上有効だとしても、このDRの設備導入コストはどうなのでしょう?DRが社会全体で見た場合、電力システムに非常に有効であり便益が費用を上回ることが確実だとしても、DRの導入コストが非常に高く、DRを実施する企業がすべて負担しなければならないとしたらDRを導入するインセンティブは生まれません。それは、北海道電力のDRプログラムに応募している企業が、DRアグリゲーター応募を目的として導入したDR設備を利用しているわけではないことからも明らかです。それはたまたま他の目的で先行導入された、もともとからのDR設備を利用しているのに過ぎません。

では、他の目的で導入されたDR設備とは、本来何を目的にしていたのでしょうか?それは需要家が電力のピークカットやピークシフトをする節電目的で需要家自身が導入したものでした。しかしこのDRの設備導入の方法に頼っていてはアグリゲータービジネスとして限界があります。それはDRシステム自体が十分リーズナブルなものであり、DRアグリゲーターがそのビジネス目的のためだけにDR設備導入したとしても十分採算の合うものでなければなりません。

私たちのODMSはそのような要請に答えられてかつ十分な機能を持ったデマンドモニタリングシステムです。

ここで一つ協調したいのは、DRはアグリゲータービジネスだけなく様々な形を変えたプログラムが存在するということです。そしてDRは既存の電力会社にとって重要なのと同様に新電力にとっても重要なものになるということです。次にそれを説明します。

2.再生可能エネルギーはもっと増せる

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2011年3月の震災の後、日本は再生可能エネルギーをもっと早く普及させるべきだとの声が大きくなりました。それからすぐに固定価格買取制度(FIT Feed-in Tariff)が始まり、太陽光発電は瞬く間に当初の予定を大幅に上回ることになりました。認定量でいえば2030年の計画すら超えた7000万KWに達することになったのです。しかし太陽光発電だけが急激に増加した結果、今計画の見直しを迫られる結果となっています。

しかし私たちはある程度の見直しは必要だけれど、この再エネ推進の勢いを止めてはいけないと考えています。なぜなら原発は震災前のように簡単に再稼働できる保証はありません。日本のエネルギー自給率はわずか6%と低くエネルギー安全保障上も好ましくない状態にあります。さらに地球温暖化の問題のCO2削減は国際公約でもあります。

とはいえ、再生可能エネルギーと言っても太陽光発電、風力発電、小水力発電、バイオマス発電、地熱発電など他にも優れた電源が多様に存在します。ですので、出来ればこれらの再エネ電源の特徴と利点を生かしてバランスよく発展させたいという声が出て来ても不思議ではありません。しかしEUと比較してみても太陽光発電はまだまだ拡充させるべきものです。ブレーキをかけなければならないレベルではありません。

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さて、次のグラフ図は太陽光発電の発電量を、リアルタイムに、本来目に見えないはずの電気を時々刻々変化して見えるようにしています。グラフは30分毎の平均発電量を一分毎に再計算して表示しています。

再エネを議論する場合重要になってくるのが環境付加価値の可視化です。環境には価値がありますが、目に見える形にしない限り誰も対価を支払おうとしません。新電力がホームページ上に「私たちはグリーンエネルギーを提供します」と宣言したとしても、その電気が本当にグリーンエネルギーであることをアピールできるとは限りません。

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環境先進国EUでは環境価値がどうすれば目に見えるようになるか知恵を絞っています。

しかし、ここでこのシステムは単に発電量の見える化だけを目的としているわけではありません。この発電グラフは1分単位の発電データですが、このデータによって再エネ電力の価値そのものを高めようとしているのです。それはどういうことでしょうか?

太陽光発電グラフ

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さて、再エネの大量導入には困難な課題もあることが見えてきました。ここで一番大きな問題とされたのは、大量の変動電源の系統への投入受け入れ問題です。これには電力システムの改革が必須であるとの認識も深まってきました。電力改革なしに再エネのこれ以上の拡充は出来ないと世間一般にも認知されてきたのです。

この不安定とされる再エネを大量に電力系統で受け入れるためにはどうしたらよいのか、これは電力系統の「柔軟性」(flexibility)の問題でEUでも盛んに議論されています。まず最初にあげられるのは、柔軟性のあるガスタービン発電所などの「供給予備力」に違いはありません。しかし供給予備力だけでは電力系統の柔軟性を高めるには限界があるのです。IEA (国際エネルギー機関 International Energy Agency )の報告では次の4つが挙げられています。

  • 制御可能な発電所(通常の供給予備力と考えられているもの)
  • エネルギー貯蔵施設(主に揚水発電所)
  • 連系線(他の電力エリアとの電力取引をさす EUでは外国取引を意味)
  • デマンドサイドマネジメント

報告にあるデマンドサイドマネジメントとは、最初に説明した「DRアグリゲーター」のことです。

さらに注目すべきは「連系線」です。これは不安定な再エネの電源は広域で「集合化」することによって不安定性を「平滑化」するということです。当たり前と言えば当たり前ですが、この「集合化」が電力取引として行われることから、必要でありかつ重要となるのが再エネ発電量のリアルアイムでの把握なのです。さらにリアルタイムに把握するだけでなく再エネ電力の予測も重要になってきます。この予測精度によって系統の受けれコストは大幅に違って来るからです。

ここで新電力サイドに立ってみると、このリアルタイムでの電力モニタリングと予測は電力の同時同量の供給義務のインバランス問題に対しても同様の理由で効果的と期待されています。

私たちのODMSはそのような要請に答えられてかつ十分な機能を持ったデマンドモニタリングシステムです。

ちなみに、IEAの報告で電力の貯蔵施設に揚水発電所をあげていることは注目すべきでしょう。日本で議論されているリチウムイオン電池等は議論されていません。

もともと、電力における再エネ比率の拡大、それから電力システムの改革、電力の自由化の問題は本来別々の問題でした。しかし日本に限らずEUでもこれらの改革は密接に関係し同時進行で推進されています。というのはEUは再エネを実際に拡大する中で様々な電力改革の必要性に直面し解決を迫られてきたからです。

さらについでながらEUの先行した事例で明らかなのですが、再生エネの拡充というのは、地域経済の自立、活性化そのものという認識になっています。そういう分けで日本においてもこの再エネの拡充による地域創生に注目が集まり、今地域創生の柱にしようという機運が高まってきました。今やその認識が全国レベルに同時的に広がり各地で小水力発電やバイオマス発電など地域の特徴を生かした発電の創設が始まっています。地域のエネルギーの自給率を上げることによて地域を豊かにしようという動きです。これには国の後押しも大きく関係しています。

それは結果的に日本のエネルギー自給率を上げることであり日本のエネルギー安全保障にとってとても良いことだからです。

ただ私たちはそこに若干の懸念も感じています。今地方では小水力発電やバイオマス発電で地域おこしに動きだしているのですが、「固定価格買取制度」前提としたビジネスで、思考がその先に行っていないようにも見えるのです。もちろん今あるこの制度は十分使い倒すことが必要でしょう。しかしこの制度は電気利用者の負担によるもので永遠に続くわけではありません。ですから、再エネ事業者としてはビジネスとして自力で採算が合うように創意工夫で仕組み作りに取り組んで行かなければならないと私たちは考えています。

3.新電力を悩ます電力の同時同量問題

日本は今、電力システムの改革の真っただ中にあります。2016年4月には電力自由化の第5次電気事業制度改革として電力小売りの全面自由化を迎えようとしています。そのような中にあって「新電力」と呼ばれる電力ビジネスのプレーヤーが800社以上も誕生し、新しいサービスや提案を世の中に提供し展開しようとしています。このこと自体大変素晴らしく、まさしく2016年は電力システム改革元年ということになると思われます。

その一方で、800社以上ある新電力と、既存の電力会社である一般電気事業者とでは歴然とした力の差が存在しています。そのため一般電気事業者に対しては「非対称性規制」などが存在しているわけですが、そのような規制だけでは十分とは言えず、当然ながら新電力の側がただまっているだけではなく仕掛けて行くことが求められています。しかしただやみくもにしかけても意味がありません。既存の電力会社に対して新電力はどこをどうすれば優位性を持てるのでしょうか?

ここで「非対称性規制」の非対称性の意味について考えてみましょう。一般電気事業者と新電力で何が非対称性でしょうか?現時点ではあらゆる点で非対称性が存在しています。たとえば市場に投入できる電力の量には圧倒的な差があります。しかしこうした「市場支配力」は非対称性規制である程度対応が可能かと思います。そうでなければそもそもこの電力システムの改革は意味を持ちません。しかし私たちが問題としているのはそのことではありません。

一般電気事業者と新電力では、得られる電力情報に差がある。これが問題だと考えています。一般電気事業者は電力の需給状況をリアルタイムで把握しています。ですから電力の需要に合わせて負荷追従をして電力供給を行っているわけです。ところが、電力需要に合わせて供給義務を負う新電力はというとリアルタイムでの電力の需給情報を持っていないのです。それでありながら電力のインバランスにおいて過重なペナルティーが存在する。これは矛盾です。ここを私たちは解消すべきと考えています。

そういう分けで、新電力の皆さまを今一番悩ませているのが電力における同時同量の問題ではないでしょうか?新電力としてビジネスに参加するには電力の同時同量を達成することが義務付けられています。もし販売予定の電力量を同時同量で供給できなかった場合ペナルティーが課せられます。日本のシステムでは30分間での同時同量になっています。その差は3%以内ということでこれはたいへん厳しい制約です。この課題をどう克服するか今すべての新電力に対し突き付けられています。

さて、下記のグラフをご覧ください。ある会社の電力消費の推移図です。30分単位の一日のグラフで一画面で一週間分が表示されています。このグラフは高圧受電の需要家向けのデマンドモニタリングシステムで企業において節電アクションに絶大な効果を発揮します。しかしこのシステムは新電力にとっても必須なツールだということが分かってきました。

デマンド推移図

デマンド推移図は1分ごとに30分デマンドを再計算してグラフ表示します。

デマンド推移図

デマンド管理図

1分単位で30分のデマンドを予測しながらグラフを生成しています。
デマンド管理図

1分デマンド推移

1分単位の瞬時デマンドグラフです。

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デマンド値履歴

日々のピークデマンドの履歴です。

デマンド履歴

電力量計算グラフ

1か月間単位で当月の予測ともに日々の電力消費量をグラフ化しています。

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電力料金グラフ

1か月単位で当月の予測も行いながら日々の電気料金をグラフ化しています。

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4.集合化された仮想発電所

このように電力は発電と受電と同じようなグラフです。さらにこの電力データは合算したグラフとして活用しています。ここまでお話ししたらピンと来た方もおられるでしょう。このデータはグループ内で「集合化」して「平滑化」するとともさらに「予測する」ことが可能なのです。分散化している再エネの発電所は、集合化され仮想発電所として機能するわけです。

ところで、これまで一貫してリアルタイム、1分単位ということ強調してきたことに注目していただけますでしょうか?日本のデマンドは30分単位で電力市場なども疑似的にそれが1単位として扱われます。だからと言って電力の需給情報が30分単位で良いということは全くありません。電力データは最低でも1分単位であることが必要だと、再度ここで強調しておきたいと思います。

5.バランシンググループの輪を広げませんか?

バランシンググループ(イメージ図)

私たちはそのような研究成果をもとに、草の根レベルの電力バランシンググループ形成やネットワーク化を支援したいと考えています。それには電力の「瞬時モニタリング」のシステムや電力の需要予測および発電量の予測研究が大いに役立つと確信しています。ただいくら役立つツールだからと言ってコストが見合ないほど高かったりせっかく立ち上げたビジネスの自立性が損なわるのでは全く意味がありません。せっかく苦労して新電力を立ち上げたのに実態がコンビニのオーナー化したのでは本末転倒と言わなければなりません。私たちの目的は地域のエネルギー自給率を上げることによって地元経済の活性化を図ることなのです。

システム自体すでに利用されているものですが、今後の電力システムの改革に向けてどんどん研究を進めて改良を加えようとしています。また、その他にもITの使いこなし支援、たとえばEC-CUBEを使った安価にネットショップサイトの構築をする方法や情報発信のためのブログ構築なども支援いたします。これは情報を直接顧客へ届ける手段が必須になるからです。

私たちは日本人として真剣に再生可能エネルギーを日本に普及させたいと考えています。しかしそのためにはビジネスとして成り立たなければなりません。また再エネ普及のためには電力システムの改革にも対応して行かなればなりません。新電力は再エネ普及の重要なプレーヤーです。ぜひ皆様のお役に立ち一緒にビジネスを新しく作っていければと思います。

新電力の皆さま、および再生可能エネルギーの推進を図ろうしている皆さまに私たちから提案があります。どうか私たちにコンタクトを取ってください。連絡先は下記です。

一般社団法人コミュニティーエネルギー研究所
試作室
〒194-0035
東京都町田市忠生2-31-16大和ビル3F
0427-94-9651

〒301-0032
茨城県竜ケ崎市佐貫1-3-24-203
0297-86-6505

Email info@new-star.jp

私たちは下記の目的を掲げて活動しています。

1.コミュニティ-エネルギービジネスの調査、研究、開発及びコンサルティング事業
2.メコン川流域経済圏(ラオス、タイ、ベトナム、カンボジア、ミヤンマー及びその他周辺アジア各国)に於けるコミュニティエネルギービジネスの調査、研究、開発及びコンサルティング事業
3.新電力向けの電力システムの研究、開発及び販売事業
4.産業界向けの省エネ支援システムの研究、開発、及び販売事業
5.上記目的を推進するためのソフトウェアの提供

ODMS-001 (デマンドモニタリングシステム端末装置)

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クラウド型デマンドモニタリングシステム端末です。設置は簡単で写真のタイプは電力会社の料金メーターのパルスを取得するタイプです。

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